挫折と気付きから始まった新規事業、すべては高校野球時代の原体験から–パーソルキャリア・大里真一朗氏【後編】 – CNET Japan read full article at worldnews365.me

 企業の新規事業開発を幅広く支援するフィラメントCEOの角勝が、事業開発に通じた、各界の著名人と対談していく連載「事業開発の達人たち」。前回に続き、パーソルキャリア 大里真一朗さんとの対談の様子をお届けします。

パーソルキャリア タレントシェアリング事業部 Business Innovation統括部 エグゼクティブマネジャー 兼 HiPro Direct 事業責任者の大里真一朗さん(右)
パーソルキャリア タレントシェアリング事業部 Enterprise Innovation統括部 エグゼクティブマネジャー 兼 HiPro Direct 事業責任者の大里真一朗さん(右)

 後編では、「HiPro Direct」および「HiPro」のこれからと、大里さんがさらにその先に見据える人材活用に関する世界観についてお話しいただきました。

「i-common」という資産を活かした新規事業づくり

角氏:マッチングサービスをするにあたっては、2つのマーケットを開拓して初めて成立するじゃないですか。普通の新規事業に比べたら、手間が2倍かかりますよね。

大里氏:おっしゃる通りです。開発も集客も2倍かかります。ただ、市場がまだ成熟していなくて、個人側から見ると、副業・フリーランスとして働きたいと思っても圧倒的に機会が少ない状況なんですね。転職市場は働き手の売り手市場なのですが、副業・フリーランス領域では逆です。

角氏:市場としては、外で副業したい個人の方が多い状態になっていると。

大里氏:はい。なので、その機会が溢れている状態にすることが我々の使命と捉えています。案件が絶対的に不足しているのは、企業が外部人材の活用という考え方を持ち切れてないからです。そこで我々はHiProを通じ、事業を前に進めるためには社員か外部人材かは関係なく、1つのチームを組んでいくべきだという世界観を打ち出しています。

角氏:従来のi-common、つまりHiPro DirectとHiPro Bizのハレーションはどう解決されます?

副業・フリーランス人材マッチングプラットフォームの「HiPro Direct(ハイプロ ダイレクト)」
副業・フリーランス人材マッチングプラットフォームの「HiPro Direct(ハイプロ ダイレクト)」

大里氏:前提として、このフェーズでは、一定のカニバりが発生することは当然だとは思っています。ただ、根本的に捉えれば、HiPro Bizは経営支援サービスとしてより上流の難度が高いテーマを。HiPro Directは人材支援サービスとして、より現場の推進性が高いテーマをコアとしており、提供価値が異なります。マーケットに我々の世界観が浸透するまでには時間がかかりますが、最後はお客様が選びやすい状態をHiProで創造していくために、今は3つのサービスを並べて提案させていただいています。

角氏:社内でロジックを整理するのは大変だったのでは?

大里氏:HiPro BizとHiPro Techだけでは人材活用の多様性が生まれません。だから、HiPro Directを提供するという趣旨を最初に上層部を含め認識を併せることができていたので、それほどではなかったですね。むしろ、ジョブコードを作る方が大変でした。

 今世の中には使えるものがなくて、i-commonの経験や「doda」の案件情報など、パーソルキャリアが持つ100万件以上の求人データを活用し、自分たちで作りました。経営企画、事業企画、新規事業、マーケ、経理、人事、広報・IRといったビジネス領域、他にも物流や購買、調達、製造、研究開発といった製造系の事業領域は網羅してあって、今年度中にエンジニアやデザイナー領域を追加していく予定です。また、ジョブの次には人間性や企業カルチャーをキーにマッチングできるところまで昇華させていく構想も描いています。

法人サイドから毎月300商談が来る仕組み

角氏:ちゃんと儲かる感じになってます?(笑)

大里氏:軌道に乗り始めたぐらいです。コンスタントに受注も入り始めており、思想がちゃんと伝われば刺さるという実感を得ていますね。市場を創るという覚悟のもと、初年度から登るべき山を高く設定しているのでそこは頑張らなければなりませんが、現場レベルで見ればお客様から高評価をいただいていますし、アーリアダプター層は確実に獲得できていて、プロダクトの価値やコンセプトの価値は実証できたと思います。

角氏:新規事業を作っていく時の1番難しいところは、お客さんを連れてくるところだと思います。ビジネスには、何かを仕入れて、仕入れたものを商品化し、お客さんを連れてきて、販売するという4つのフェーズがありますが、お客さんを連れてくる部分は、既存の事業でも大変じゃないですか。でも新規事業では誰がお客さんなのか、お客さんがいるかすらわからないものです。そこはどうされたのですか?

大里氏:最初はいろいろ難しかったですが、HiPro Bizにはコンサルタントが約200人いて、そこのケイパビリティが圧倒的に強いため、案件獲得のためのマーケ費用はほとんどかけなくても毎月200〜300商談は獲得できています。

 
 

角氏:本当ですか!

大里氏:それが当社の強みです。このマーケットだからこその覚悟や理解の解像度の高さを持ち合わせています。

角氏:旧i-commonの財産をうまく使えているということですね。

大里氏:基本的に、i-commonの顧客は大企業の役員クラスの皆様でした。一般的に役員は10種類くらいのミッションを持っていて、注力できるのは3つくらいで残りは見きれていないという状況だと思います。その3つの部分はHiPro Bizや外部のコンサルを使っていただいている領域で、残りの7つの領域でスポットコンサル的にHiPro Directを使っていただくという形にしています。

角氏:そこからHiPro Bizにつなげるための導線にもなっているわけですね。そしていずれはHiPro Directの方がマスになると。

大里氏:私たちとしては、HiPro Directをオフィスソフトのような企業の業務インフラにしたいと思っています。何かに悩んだら、検索するのではなくてHiPro Directをすぐ叩ける世界にしたいんです。

全社でパーパスを共有しブランドチェンジに挑む

角氏:そして「HiPro」が事業の次の柱になると。

大里氏:パーソルキャリア自身が、dodaに続くサービスにHiProがなると明確に謳っています。やはり雇用と非雇用の領域は、どんどん垣根がなくなっていくと思っているので、転職に続く大きな市場をもう一度作りに行こうとしています。HiProが強いと思える根拠は、社員全員が協力してくれることです。全員が「個人の可能性、社会の多様性を広げていくんだ」という意思を持っていることを、リリースしてから特に感じています。

角氏:それは皆さんが、共通認識としてパーパスを持っていらっしゃるからでしょうか。そこに皆さんがアラインできているのは、何かきっかけはあったんですか?

大里氏:現場からすると、みんなi-commonが好きで、i-commonを通じて社会を変えたいという人が本当に多かったことが大前提にあると思います。そこで、さらに上のステージに行こうとしたときに現場で戦う限界もわかって、もう一段仕掛けるためにサービス名称を変えたのですが、その際には、映画館を貸し切りにしてサービス名称が変わるという動画を流し、i-commonがHiProに変わる瞬間にみんなが立ち会って、全員が同じ方向を向いて走れるように組織設計を含めてやり切ったのです。

角氏:映画館を借りたんですか、それは凄い。ちなみにパーパスはどのようなもので、どういう形で決められたのですか?

フィラメントCEOの角勝
フィラメントCEOの角勝

大里氏:「スキルを解放し、社会を多様にする。」です。決めるにあたっては外部の専門家にも協力いただき、私も含めて事業責任者やi-commonで活躍いただいている個人の皆様が言葉を出し合い、1つにしていきました。なぜブランドが変わるのかということをトップが語り、納得するまで話し合いましたね。

角氏:そうやってみんなが覚悟を決めて腹落ちさせて、パーパスを共有しているからこそのブランドのチェンジであり、新規事業のスタートであると。そして、新規事業のHiProを新しい事業の柱にしていくために一丸となっているのですね。

大里氏:この副業・フリーランス領域を一般化させられるか、僕らがしっかりこの市場のスタンダードを作らないと、個人の皆さんが不幸になり、企業の事業が失敗してしまうと、事業責任者の私も含めてみな覚悟を持って向き合っています。

野球部時代の挫折体験を活かす道を今後も探求したい

角氏:ちなみに野球部時代の原体験が発端というお話でしたが、それはどの程度今に生きているのですか?

大里氏:かなり生きていますね。私は高校に入ってすぐトップを獲れないと気付いたので、試合に出るために競争が激しくないポジションを狙ってレギュラーを獲得しました。その際に経験した、自分の可能性をどう見出だすかといった自分の組織における生き方や成果の出し方、うまくなるためのPDCAの回し方など、やはりそこに原点があって、仕事にも生きています。そういったアスリートが日々向き合っている取り組みを仕事と繋げられないか、探求していきたいとも思っています。

角氏:でも、逆にめちゃくちゃ上手くて最後まで行った人は、メタ認知による自分をここのポジションにしたらいいみたいな戦略性は培われないかもしれませんね。

大里氏:確かにそうですね。私はすぐに気付きを得て弱者の戦略を持てましたが(笑)、1年次からレギュラーを取った仲間は甲子園に届かずに引退し、目標や夢を失ってタガが外れてしまいましたね。結局それまでのチャレンジに費やしたエネルギーを次へ転換できないという問題が根底にあって、そこには教育の問題もあるのですが、その部分で「人の可能性」という2つ目のテーマを持ちたいと思っています。今やっていることの延長線上にあるのか、もう1つの新規事業になるのかはまだ分かりませんけど。

 今の日本では、チャレンジし終わった後のスイッチの入れ替えが難しいんですよね。そこにちゃんとセーフティネットや選択肢が用意されていないと、この国でチャレンジをする人が少なくなってしまうし、夢を追い切れなくなってしまいます。私が今取り組んでいることは、「HiPro」を広げることや副業・フリーランスを活用する世界観を広げていくことですが、この先には個人も企業も対等になって、様々なはたらき方、人材活用のあり方が広がっていくとの信念をもって取り組んでいます。

 
 

角氏:同期の仲間も、エネルギーを別の方向に向けられたら大成できたかもしれませんからね。やはりいろんなチャレンジを並列してできる世界というのは、僕も素晴らしいと思います。

大里氏:新規事業は結局、自分がやりたいこと突き詰めていった結果、誰もやらないから自分がやりたいと思って始めるもので、内向きの想いが外向きに昇華していく世界なのかなと。その点パーソルキャリアは、僕がやりたいことをやらせてくれる会社です。まずはHiProを軌道に乗せてからですけど、そういうチャレンジや、いろんな変化を作り続けていきたいですね。

角氏:その大きなビジョンがあるからこそ、周りの人たちもそこに一緒に乗ってくれて、協力してくれる状況ができているのでしょうね。理想的な新規事業の作り方になっていると思います。大里さんのお話は学びが多くて、ついたくさん聞いてしまいました。これからもよろしくお願いします!

【本稿は、オープンイノベーションの力を信じて“新しいことへ挑戦”する人、企業を支援し、企業成長をさらに加速させるお手伝いをする企業「フィラメント」のCEOである角勝の企画、制作でお届けしています】

角 勝

株式会社フィラメント代表取締役CEO。

関西学院大学卒業後、1995年、大阪市に入庁。2012年から大阪市の共創スペース「大阪イノベーションハブ」の設立準備と企画運営を担当し、その発展に尽力。2015年、独立しフィラメントを設立。以降、新規事業開発支援のスペシャリストとして、主に大企業に対し事業アイデア創発から事業化まで幅広くサポートしている。様々な産業を横断する幅広い知見と人脈を武器に、オープンイノベーションを実践、追求している。自社では以前よりリモートワークを積極活用し、設備面だけでなく心理面も重視した働き方を推進中。

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